■視聴者を迷宮に誘い込む『クジャクのダンス』

 これまでの言動から京子が怪しいのは確かだが、ここまでヒントを出されると、ミスリードさせようとしているのではないかという声もある。東賀山事件と春生の放火殺人事件など、多くの謎ととものに、視聴者も迷宮に入り込んでしまっているようだ。

 新たな怪しい人物を次々に繰り出すなど、当初から考察を盛り上げる仕掛けになっている本作。中でも最大の仕掛けは、物語の発端であり、ストーリーの中心になる、東賀山事件の被害者、林川一家に関して描写していないことだ。物語の発端となる事件の情報が提供されておらず、見ている側は肝心となる殺害者と被害者をイメージできない。考察をする視聴者は、そもそも不利な状態に置かれているのだ。

 普通のサスペンスドラマなら、事件当時の状況が徐々に明かされていくことで、犯人像が絞られていく。しかし、本作はそれが全くないまま怪しい人物の描写を続けるため、謎がどんどん広がっていくばかりで、事件の核心に近づけなくなっている。視聴者が迷宮に入り込むよう、作られているのだ。

 考察を煽るドラマといえば、西島秀俊(53)主演の『真犯人フラグ』(日本テレビ系)が思い出される。やたら怪しい人物を出してきて、謎を広げる手法だが、殺害された主人公の妻・真帆(宮沢りえ/51)の不倫など、本筋につながる情報は出してはいた。それを考えると、物語の発端を見せない『クジャクのダンス』の考察煽りは、『真犯人フラグ』以上かもしれない。

 第8話では、神井(磯村)が、東賀山事件の鍵を握る人物と思われる春生(リリー・フランキー)の手紙に冤罪だと書かれた6人で最後の“廣島育美”にたどり着くため、また謎を広げそうだ。はたして、すべての伏線を回収し、納得のラストを迎えられるのか、終盤の展開に注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。