日々、流行の最前線を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が、Z世代の今を徹底分析。サブスクリプションサービス(月額定額制)での音楽配信が当たり前の世の中で、レコードやカセットなどの「アナログ遺産」がZ世代の関心を集めているという。一度は消えかけたアナログメディアがなぜ今、再び若者を魅了するのか。その背景や影響について探ってみた。
まず、「復活」が著しいのがレコードです。アメリカではこの10年間、アナログ・レコードの売り上げは右肩上がりで、全米レコード協会が発表した2024年上半期のレポートによれば、前年比117%増の7億4000万ドル(約1123億円)の売り上げを記録。今後も市場は成長を続けると予測されています。
この動きは日本でも同様。音楽・映像ソフトの推定販売枚数およびランキングを集計している「サウンドスキャンジャパン」によれば、24年のアナログ・レコードの売上は前年比115%で、アーティスト別では約2.3億円を売り上げた宇多田ヒカル(42)が首位になっています。
「宇多田は最新作『SCIENCE FICTION』(24年)だけでなく、『First Love』(1999年)など過去に発売されたタイトルも好調。今や新譜が発売されるタイミングで“レコード盤を発売する”というパターンが定着しているといい、他にも坂本龍一(享年71)や藤井風(27)のセールスが上位に入っています」(音楽関係者)
この現象の背景には、デジタル音源にはない「所有する喜び」や「フィジカルな体験」をアナログ・レコードに求める若者たちの姿勢があると考えられます。
ストリーミングサービスが主流となった現代において、レコードは音楽を「手に取る」感覚を提供し、ジャケットアートや針を落とす動作など、五感で楽しむ要素が豊富。また、レコード特有の温かみのある音質も、デジタルにはない魅力として評価されています。