日々、流行の最前線を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏。そんな戸田氏が今、気になるというのは「いつの間にか呼び名が変わったもの」。その中から今回は5つを紹介する。
みなさん、音楽の授業やお祭りなどでおなじみの「タンバリン」。最近では「タンブリン」という名前もよく耳にするようになりました。どっちが正しいの? と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
実は、世界的には「タンブリン(tambourine)」と発音する国も多いのです。この楽器はフランス語の「タンブール(鼓)」が語源で、英語圏では「タンブリン」に近い発音をするのが一般的。近年、日本でも音楽業界や一部の若者の間で「タンブリン」という呼び方が広まりつつあります。
「呼び名の変化は言語のグローバル化の影響が大きいですね。特に英語圏の音楽シーンでは“タンブリン”の発音が一般的なので、自然と日本でも影響を受けたのでしょう」(音楽ライター)
かつて、VHSビデオデッキが主流だった時代には、カセットテープを物理的に巻き取って再生位置を戻していたため、「巻き戻し」という言葉が使われていました。しかし、DVDやブルーレイのようなデジタルメディアでは、物理的に巻き戻す動作がなくなり、代わりに再生位置を戻す「早戻し」という表現が使われるようになりました。
実際には、1990年代後半にDVDレコーダーが登場した頃から「早戻し」という呼称はすでに存在していましたが、多くの人が気づくことなく使い続けていました。その後、2011年の地上波デジタル放送開始や16年のVHSデッキ生産終了により、「巻き戻し」の概念が薄れ、「早戻し」という言葉が一般化したのです。
「テクノロジーの進化によって、言葉の意味も変わるのが興味深いですね。特に“巻く”という行為自体が不要になったことで、名称が変わったのは自然な流れでしょう」(ライフ誌編集者)