■「肌色」「競艇」消えた言葉たち……
同じように消えた言葉として知られるのが「肌色」だ。「肌色」という色名は、クレヨンや絵の具に当たり前のように使われていました。しかし、国際的な人種多様性の意識の高まりにより、一つの色を「肌色」と定義することが問題視されるようになりました。
日本では2000年前後に学校教育の現場で「肌色」の表現が使いづらいとの声が上がり、大手クレヨンメーカーが呼称変更を決定。ぺんてるは「ペールオレンジ」、サクラは「うすだいだい」といった新たな名称に変更しました。
祝日の中にも名称変更をされた日があります。1966年に「体育の日」として制定された祝日は、20年に「スポーツの日」へと名称変更されています。
この変更の理由は、「体育」という言葉が学校教育の授業を連想させる一方で、「スポーツ」という表現の方が国際的に広く認識されているためです。また、21年に行われた東京オリンピックを機に、スポーツの価値や素晴らしさを国内外の人々と共有する狙いもありました。
この変更により、祝日の趣旨も「スポーツにしたしみ、健康な心身を培う」から「スポーツを楽しみ、他者を尊重する精神を培うとともに、健康で活力ある社会の実現を願う」へと改められています。
公営ギャンブルでも名称の変更はあるのです。10年に「競艇」は「ボートレース」へと名称変更されました。もともとは「モーターボート競走」や「ボート」とも呼ばれていましたが、97年に「競艇」に統一され、その後10年に「BOAT RACE(ボートレース)」という名称へと変更されました。
「変更の背景には、競艇が持つギャンブルのイメージを和らげ、スポーツとしての魅力を強調する狙いがあります。また、より国際的な名称にすることで、海外のファン層を取り込む目的もあったとされています」(スポーツ紙記者)
今後も技術の進化や社会的な価値観の変化、国際化の流れなど、さまざまな要因によって、新しい言葉や表現が生まれたり、馴染みの言葉が変わっていきそう。時代とともに言語感覚もアップデートしていきたいものです。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。