■最終版にきて「これ誰が主役のドラマ?」の声

 主演の橋本が不在の「異例の2週間」以外でも、『おむすび』は本来の主人公である結(橋本)の描写がダイジェスト気味なのに、歩(仲)のギャルマインド、聖人(北村)と父(結の祖父)・永吉(松平健/71)の確執からの和解など、総じて“米田家の物語”を深堀りする展開が目立つことから、

《主人公なのに微妙に事態の外側に居て、当事者じゃない感もある》
《これ誰が主役のドラマ?平成〜令和史をふわっとなぞるダイジェスト?》
《まあチャラチャラおむすび夫婦よりナベさん(※真紀の父で歩にとって昔馴染みのおじさん/緒形直人/57)と歩の方が丁寧に描かれてたからいよいよ主役が誰なのかわからなくなったな》
《まきちゃんに似てる患者が結のいる病院に入院してくるのか。ここにきてまた歩の心の傷をクローズアップ。(略)本当に歩が主役でよかったんじゃないの?》
《いい朝ドラは終盤だと主人公や周りの人が今までやってきた「総括」になるけど、おむすびはその場その場で場当たり的な話しかやってないから結局「何がしたかったのか?」が全くわからないんだよな》

 といった、“誰が主人公なのか分からない”という指摘が多く寄せられているのだ。

「朝ドラは主人公の成長物語を主軸に描くものですが、『おむすび』の場合は物語のダイジェスト感が強すぎて、主人公・結の成長ぶりが伝わってこなかったんですよね。そればかりか、橋本さんの多忙なスケジュールの問題なんでしょうが、ほぼ不在の回さえあった。これでは視聴者は結に感情移入できませんよね。

 その結果、最終週でも主人公の具体的な目標地点が見えてこないばかりか、ついには、誰がドラマの主人公なのかすらはっきりしないような展開になってしまっているということですね」(前出のテレビ誌編集者)

『おむすび』の“誰が主人公なのか分からない”問題――長年の朝ドラウォッチャーであるドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。

「第24週(17日~21日)でも、結がいない糸島で、母・愛子(麻生)と祖母・佳代(宮崎美子/66)の涙を誘うエピソードが描かれましたが、ここまで主人公がいないところで話がしっかりと展開されると、本作は結の物語ではなく、4世代に渡る家族の物語だったのは明らかでしょう。

 家族それぞれが過去に問題を抱え、それを結が“ギャル魂”と“食”でつなげて解決していく、なんて構想だったのかもしれませんが、ギャル要素が物語にマッチしなかったことから、結に感情移入することができないうえ、家族との関係性も希薄に見えてしまいましたね。そうして、回を重ねるごとに主人公・結の存在感がどんどん軽くなっていって……『おむすび』は、俳優・橋本環奈の魅力を活かせなかったですね」

 ここまでの『おむすび』の全話平均の世帯視聴率は13.2%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)。朝ドラ史上ワースト視聴率13.5%(※倉科カナ主演の09年度後期『ウェルかめ』)更新は、確定的なものになってしまっている。

 最初から「家族の物語」や「姉妹の物語」と打ち出しておけば、幾分かは数字も評価も違っていたのかもしれない……。

ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。