■地元・四国中央市の担当者は「福岡県じゃなくて?」

 すっかり“廃墟”化した大野城だが、現地・愛媛県四国中央市に問い合わせると、担当者は「知らなかった」とその存在を把握していなかった。

「大野城……ですか?」というリアクションだったが、それもそのはず、地図には載っていないのだ。ネットで「大野城」を検索し、「福岡県にある『大野城跡』ではなくて?」と戸惑う担当者は、「愛媛県の大野城……本当ですね、 “廃墟”をまとめたサイトで紹介されているんですね」と驚き、市役所内でも「大野城」に関する情報を聞いてくれた。

 結果、「観光交通課などいろいろ聞いてみたのですが知ってる人はいなくて……」(担当者)と、ただでさえ秘境の山の中にあるためか、地元民も知らない廃墟・「大野城」。

 実は、観光客を呼ぶためにつくったものの、ブームの終焉とともにそのまま放置され、廃墟化するものは少なくない。「おそらく大野城もそうでしょう」だと指摘するのは、前出の書籍編集者だ。

「愛媛県の観光客数は1965年に約1000万人、1973年には過去最高の約2000万人と、高度成長期に急成長しています。旅行スタイルも団体旅行から少人数での旅行に移行し、秘境にも関心が集まるなか、観光客向けに派手な建物をたてたのでしょう。

 ただ全国各地にこうした建物はあり、取り壊すのもお金がかかるということで放置されているんですよね。それが廃墟として、コアなファンにとって“観光地”化することはありますが、商業的・経済的に新しく息を吹き返すことはないのが現実です」(前同)

 廃墟となったのちに有名になるとは、なんとも切ない話だが……。