■“伝説の作品”と比較する声《私の中では完全に 「ちむどんどん」超えました》

 朝ドラは主演女優の負担が大きく、撮影期間中は朝ドラだけに集中する人が多いとされる。

 しかし、橋本は昨年3月末に『おむすび』がクランクインしてからも、舞台『千と千尋の神隠し』の公演で4月から5月末までイギリス・ロンドンに行ったり、同年10月頃からは映画を2本撮影したりと、驚くような多忙ぶり。ヒロインでありながら『おむすび』の撮影に参加できない期間があり、その影響でシナリオが薄味になった、とも言われている。

 特に第16週と第17週(1月20日~31日)は、主人公の結が顔見せ程度しか登場せず、姉・歩(仲)を中心に神戸の商店街の住人たちを描くという異例の2週間だった。

『おむすび』制作統括の真鍋斎氏は、1月23日配信のWEBサイト『リアルサウンド』のインタビューで、上記のようなチャレンジングな構成は長尺な朝ドラなら《主人公だけではない、いろいろな人たちの背景を描ける》と考案したことを明かしているが、同時に俳優側のスケジュールもストーリーに影響していたことを認めている。

 そんな『おむすび』が最終回を迎えることを受けて、Xには、

《私の中では完全に 「ちむどんどん」超えました》
《もはやちむどんどん超えどころかおむすびは朝ドラそのものを焼きおむすび超え消し炭にした感さえある…朝ドラはどうしてこうなった…どこから…》
《ちむどんどん のラストも大概だったけど、「おむすび」はそれを遥かに凌駕しそうな予感》

 と、近年の朝ドラ屈指の物議作『ちむどんどん』(22年度前期)の名を出す声も多い。

 黒島結菜(27)の主演作『ちむどんどん』は脚本や演出がツッコミどころ満載で、最終回に至っては主要キャラクターの近況をナレーションで済ませたうえで雑な老けメイクをした主人公たちの全員集合で終わるという、良くも悪くも痛烈なインパクトを残した作品。

「『おむすび』は、評判が良くなくSNSが大荒れとなった『ちむどんどん』と比較されてしまっていますね。

『おむすび』がここまで酷評されている最大の元凶は、やはり、主人公・結の成長がしっかりと描けなかったことでしょう。まさに、指摘された“ダイジェスト感”が強かったことで、視聴者は主人公に共感できず、応援できなかった。

 それだけでなく、歩を筆頭に主人公以外のキャラクターに焦点が当たる回が多く、なんのドラマかわからなくなってしまい、見るのがつらくなった多くの人が視聴をやめてしまったと。最終盤も、孤独な少女・詩のことで深く悩む歩の方が主人公ぽいんですよね」(前出のテレビ誌編集者)

 もちろん、制作側にも熱意はある。制作統括・真鍋氏は3月27日配信の『リアルサウンド』のインタビューで、《ドラマが終わった後にも彼女たちの人生は続いていく》という願いを込めて、《回収編ではなく物語を前に進める構成にした》と、あえて最終盤に詩のドラマを盛り込んだとコメントしている。

「そして『おむすび』は、ギャルを描き、震災を描き、コロナ禍も描きました。同作は“定番の朝ドラ”ではなく、相当にチャレンジングな作品だったわけです。ただ、“定番”に慣れている視聴者には制作サイドの狙いはなかなか伝わらず、チャレンジングな作品であることを差し引いても、橋本さんのスケジュール問題は透けて見え、その影響である薄味感は拭えなかったと。

 数字はあまりにも酷く、3月26日時点で世帯13.1%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)と、朝ドラ史上ワースト視聴率13.5%(※倉科カナ主演の09年度後期『ウェルかめ』)更新は確定的です」(前同)

 放送終了から2年半が経過したが、『ちむどんどん』の強烈な記憶はいまだ多くの朝ドラファンに残っている。『おむすび』も同じような扱いになっていくのだろうか――。