■気になりすぎる河合優実
しかし、ひっかかるのがそのヒロインだ。“人生の荒波をパワフルに乗り越えていく”ヒロイン像が、あまりに今田のイメージそのまま。それはそれで悪くないが、長い人生を描く朝ドラでは、元気なだけではやっていけない場面も当然、出てくる。今田も最近の出演作『いちばんすきな花』(フジテレビ系)など、元気なだけではない役に挑んでいるが、物足りなさを感じていたのは正直なところ。
それに加え、妹役の河合優実の存在が気になる。『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK)、『不適切にもほどがある!』(TBS系)と話題作での演技が称賛を集め、主演映画『あんのこと』では、日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞など映画各賞を総なめ。若手俳優の中では、高石あかり(22)と並んで“演技力お化け”として知られる。
もちろん、河合はヒロインの妹として、前に出るのではなく受けの演技をするのだろうが、黙ってそこにいるだけなのについ見てしまうオーラが彼女にはある。河合が演じる蘭子にスポットがあたるエピソードがなくても、さりげない感情の変化を表現する演技だけで、今田を食ってしまう場合もあるだろう。
前期『おむすび』でも、ヒロインの姉・歩を演じた仲里依紗(35)が、橋本環奈を食ってしまう場面がたびたび見られ、「誰が主役?」という声が多く上がっていた。さすがに『あんぱん』でそれはないだろうが、今田には豪華な共演陣を向こうにまわし、元気なだけではない演技を見せてほしい。それがかなえば、朝ドラとしての質は確実に上がるはずだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。