日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回のテーマは「副業」。あの人気芸人も地道に稼いでいる、注目の国家資格を深堀りした

「カッチカッチやぞ!」のキメ顔で一世を風靡したのはお笑いコンビ・ザブングルの加藤歩さん。2007年のM-1決勝進出以来、独特の筋肉芸でお茶の間を賑わせた彼も、今や芸歴25年超のベテラン芸人です。

 その加藤さんが近年取り組んでいる「副業」が業界内外で話題となっています。 それは「消防設備士」。バラエティの現場で見る「芸人・加藤」の姿とは打って変わり、作業着に身を包み、真剣な眼差しでビルやマンションの防災設備を点検して回る――。芸人でありながら国家資格を持ち、安定収入を得ているという“二刀流”のキャリアには、単なる副業という言葉では片付けられない深みがあります。

「消防設備士」とは、ビルやマンションなどの建物に設置された消火器、スプリンクラー、火災報知器、避難誘導灯といった防災設備の点検や整備、あるいは設置工事を行う専門職です。 

 消防法で半年に一度の点検が義務付けられているため、常に需要があり、仕事が安定しているのが特徴。芸人の仕事は波がありますが、消防設備士は法令に基づいた需要があるので、仕事は絶えません。

 加藤さんが手掛ける作業は、ビルやマンションの各部屋、トイレ、廊下などに設置された探知機や避難設備の点検。煙を出して探知機の反応を確認するなど、実際の火災時を想定した対応が求められます。大規模なタワーマンションでは、5人チームで1週間かけて作業することもあるといいます。