■日給2万円、週2~3日の労働で月給20万円

 加藤さんはすでに5年のキャリアを持つベテランで、1万室以上の点検実績を持っているそう。日給2万円、週に2〜3回働いて月に約20万円という安定収入は、ピン芸人として再出発した加藤さんにとって、大きな安心材料となっていることでしょう。

「転機は2019年。当時、闇営業問題による謹慎処分から復帰したばかりだった加藤は、テレビ番組で出会った消防設備会社の社長に“芸能界の仕事は不安定だから副業しませんか?”と声をかけられたそう。

 最初は笑い話のように聞き流したが、2020年のコロナ禍で状況が一変して仕事は激減、収入は4分の1に。家族を養い、住宅ローンを抱える身としては、まさに“背水の陣”となった。そこで加藤は社長の誘いを思い出して連絡。補助的な作業から現場に入りつつ資格取得に挑戦したそうです」(放送作家)

 消防設備士の資格は甲種と乙種に分かれており、1類〜7類(さらに特類も)と区分されています。取り扱える設備は各類で異なり、たとえば乙種6類は消火器の点検整備、甲種4類なら火災報知設備の設置工事も可能となります。

 甲種の取得には大学での特定学科の修了、もしくは3年以上の実務経験などが必要なため、乙種から始めるのが一般的。合格率は乙種で40〜60%とされており、独学でも合格可能です。

 ネット上でも加藤さんの働きぶりに対して、「お笑いだけじゃなく、真面目に国家資格を取って働いてるの、尊敬しかない」「副業っていっても、ここまで真剣にやってるのがすごい。むしろ本業よりしっかりしてそう」「消防設備士の加藤さんは芸人の時と違ってイケメン(笑)」という声も聞かれます。

 飲食店、アパレル業、アパート経営など芸能人が副業に取り組む例は増えてきましたが、加藤さんのように地道に現場で汗を流し、国家資格まで取得して働いている例は稀。

 しかも、この副業がきっかけで全国の防災イベントに招かれるようになり、「芸人×消防設備士」という独自のポジションを築き上げています。

 あるインタビューで「YouTubeとかは、みんなが行くところだからやらない。(明石家)さんまさんが“人と違うことをやれ”って言ってた言葉が、ずっと心にあるんです」と語っていた加藤さん。

 その言葉通り、芸人としても消防設備士としても「オンリーワン」の道を突き進んでいるようです。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。