■意外にも端に座りたがる心理は万国共通だった。

「アメリカの研究によると、前もって『この部屋は混み合う』と言われた場合は部屋の端の席に、『混み合わない』と言われた場合は真ん中の席を選ぶ傾向がみられています。国に関わらず、人間は『見知らぬ人とは関わりたくない』という心理を抱いているようです」(小西氏=以下同)

 では、満員電車など混み合っている状況で、私たちはどのようにして不快な感情を軽減しようとしているのだろうか。

「人間は他人を意識した途端に不快な感情を抱きやすい傾向があります。特に満員状態に押し込められるとかなり気まずくなる。そこで相手を意識しないよう注意を他に向ける行為から発展したのが“中吊り広告”と言われています。

 また、現代人が車内でイヤホンで音楽を聴いたり、スマホに夢中になるのも、他人を意識したくないという心理でしょう」

 最後に小西氏は、現代人の特性は電車以外の席でも見られると語った。

「例えばカフェ。混んできた状況でも、人々は“隣に他人がいない”状況を求めます。人の間に座るぐらいなら別の店に行こうと考える人もいるでしょう。

 とはいえ、これはあくまで“一般的な傾向”なので、他者との関わりが気にならない方は、電車やカフェでも人と人の間に座ったりするでしょう」

 電車に座る場所でも垣間見える人間の深層心理。ストレスフルな満員電車も、別の視点から眺めてみると良いだろう。

小西啓史(こにしひろし)
武蔵野大学名誉教授
学歴:立教大学大学院文学研究科
研究領域:社会心理学 環境心理学
主な著作:『社会心理学パースペクティブ』『プロパガンダ』『環境心理学』など