■ホームドラマの皮をかぶった社会派

 詩穂(多部)の妄想シーンなど、コミカルな描写を入れつつも、“家事”という終わりなき仕事を軸に、ズシンとくる重い内容。特に中盤、育児と仕事の両立に心身ともに疲弊していく礼子(江口)のターンは、多くの視聴者に刺さったようだ。これは、ホームドラマのイメージでありながら、最近の火曜ドラマに多い、しっかり社会問題を入れ込んだ内容だからと思われる。

 礼子のキャラ設定に関して、X上で、《原作より性格がキツくなっている》という指摘があったが、ドラマのテーマを際立たせるための、あえての改変ではないだろうか。また、4月1日という異例の早いスタートになったのも、新年度1日目、保育園が始まる日に、働くお母さんたちに見てもらいたちという意図を感じる。制作側もかなり力が入っているようだ。

“助けてが言えないまじめな人”を描く、という点では、同原作者の『わたし、定時で帰ります。』と同じ路線だが、あちらは、元婚約者や恋人が登場し、恋愛要素がけっこう入っていて、お仕事ドラマとしてはソフトな印象だった。それに比べると『対岸の家事』のほうが、よりシリアスな内容になりそうだ。

 次回、詩穂は、厚生労働省の官僚で2年間の育休を取得している、自らの育児計画に自信満々のパパ・中谷(ディーン・フジオカ/44)と出会う。初回のラストで不穏な雰囲気で登場したが、今後、詩穂が中谷とどう関わっていくか、今後の展開に注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。