■チケットの販売はわずか800万枚のみ

 会場内には最大80か所の給水スポットが設置されるとされていますが、来場者数や天候の条件を踏まえると、十分な体制が整っているとは言い難い。さらに、飲食店では来場者のマイボトルに飲み物を入れるよう要請されており、衛生面での課題も懸念されています。

 1970年に開催された前回の大阪万博では、77か国が参加し、6422万人という記録的な来場者数を誇りました。会場の太陽の塔は今もなお大阪の象徴として親しまれています。しかし今回の大阪万博は、開催1か月前の時点で前売りチケットはわずか800万枚しか売れておらず、そのうち一般購入は3%程度にとどまっています。

 企業による組織購入が大半を占めており、個人の関心は極めて低いのが実情。国民の税金でまかなわれる運営費、物議を醸した「2億円のトイレ」建設、個人情報取得に対する不信感、メタンガスによる爆発事故といった数々の問題も、この不信感に拍車をかけています。

 国際博覧会という性質上、ある程度の価格帯や特別仕様は理解できる部分もありますが、インバウンドに目を向けるあまり、日本人の感覚とかけ離れすぎていては、興味も参加意欲も削がれてしまいます。物価高や増税に苦しむ家庭も多く、その中で1杯3850円のそばが、果たしてどれほどの共感を得られるのでしょうか。

「ぼったくり万博」との揶揄を払拭するためには、明確な価格設定の根拠や、誰もが安心して楽しめる運営体制が必要不可欠。現状のままでは、せっかくの国際イベントが、不満と失望だけを残すことになりかねません。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。