流行の最先端を日々、研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏。そんな戸田氏が今、注目するのは中国人観光客により訪日ツアー。「爆買い」で知られる中国人観光客の行動に今、変化が起きているという。
「爆買い」――。この言葉が日本で流行したのは2014年から16年頃、円安と中国経済の拡大を背景に、訪日中国人観光客が家電や化粧品を大量に購入する姿が象徴的に語られていました。しかし、その時代はすでに過去のものとなり、現代の中国人旅行者は「モノよりコト」、つまり「買う」旅から「体験する」旅へと明確にシフトしています。
この変化を裏付けるように、昨年8月に博報堂DYホールディングスのマーケティング・テクノロジー・センター(MTC)と中国のプラットフォーム「美団」が実施した「インバウンド予報調査(第3回)」では、中国人の訪日意欲が高水準であること、特に一度訪れたことのある層で再訪への関心が高まっていることが明らかになりました。
中でも注目すべきは、訪日の目的として「高級レストランを体験する」(73.0%)が最多となった点です。続くのは「大衆料理を楽しむ」(70.0%)、「温泉入浴」(68.5%)、「旅館に宿泊」「四季の体感」(66.8%)、「自然・景勝地の観光」(66.0%)と、いずれも「五感で味わう日本」を重視したものばかり。「買い物」は60.2%と依然高い数字ではあるものの、かつての主役からは後退し、体験型観光の優先順位の高さが浮き彫りになっています。
まず人気を集めているのが「自然と癒し」。
「都市部では得がたい静けさや風景の美しさを求めて、北海道、長野、岐阜といった自然豊かな地域を目指す旅行者が増えています。四季の移ろいがはっきりと感じられる日本ならではの風土は、中国のSNSでも好意的に取り上げられ、口コミによる集客効果も高まっています。温泉地の人気も健在です。草津や箱根、別府といった有名地に加えて、群馬の四万温泉や長野の渋温泉など、“通好み”の隠れた名湯を訪れる中国人も増えており、情報感度の高い層が確実に拡大している印象です」(旅行代理店スタッフ)