■気楽に見たい『人事の人見』
前田の“口うるさいキャラ”の演技はちょっと過剰な感じはあったが、演技の経験の少ない松田をカバーする役割を、彼女が負っていたからではないだろうか。また、松田はセリフや動作の指示がない時の演技に難があり、人見に動きがなくなるといきなり存在感が薄くなるので、結果的に横にいる前田が悪目立ちしたと思われる。
また、ドラマのリアリティに関しても、そもそもコメディなのだから、多少、オーバーな描き方に振るのは当然。《当事者同士を合意なく会わせようとするのはNG》など、パワハラの告発者の取り扱いに関するツッコミはごもっともなところもあるが、当人の瀬沼(田中)がラップで告発をしているのだから、細部には目をつぶってドラマを楽しむべきだろう。
そして、GP帯ドラマでは端役ばかりだったところから主役に抜てきされた松田に関しては、力が入りすぎの部分もあるが、ドラマ全体のワチャワチャした空気の中では、不自然には感じず、なじんで見えていた。前田をはじめとする、実力派共演陣の大きいだろうが、浮いて見えたりはしていない。十分、合格点だろう。
今期ドラマはコメディ系が少なめで、川栄李奈(30)主演の『ダメマネ! -ダメなタレント、マネジメントします-』(日本テレビ系)ぐらい。あちらは週末放送なので、視聴率などに影響するライバル関係にならないはず。本作は週の前半に肩の力を抜いて見られるドラマとして支持されそうで、今のところ松田の抜てきは成功と言えるだろう。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。