日進月歩のめざましい進化を遂げているAI。先日もChatGPTが大型アップデートされニュースにもなったが、今や人工知能は私たちの生活にも欠かせないものとなってきた。
だが、今から35年前。日本中の子どもたちが“AI”という言葉に初めて触れた瞬間があった。それが、ファミコンの名作RPG『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』だ。
「発売当時は“AIってなんだ?”という感覚でした。仲間キャラが、指定された作戦に従って自動的に行動し、一緒に戦ってくれるんです。それまで聞いたこともなかった新しい概念で、当時小学生だった私には理解できませんでしたね」
こう自身の体験を振り返るのは、ゲームやアニメのニュースサイトを運営していたクンダリーニ林田氏だ。今から35年前に使われていたAIとはどのようなものだったのだろうか。
「戦闘を重ねることで、より効率的な戦い方を学んでいくという仕組みでした。仲間に命令を出すと、敵の弱点を突いてくれるようになり、オートバトルの精度が上がるというものです。ただ、その機能のせいでキャラクターたちの行動が全体的に“ポンコツ”だったんですよね」(前同)
当時の思い出を懐かしそうに笑う林田氏。仲間キャラクターたちは、必ずしも最善の行動を取ってくれるわけではなかったようだ。当時の残念なAI行動エピソードも聞いてみた。
「代表的なのがクリフトというキャラクターが、ボスキャラに効かない即死呪文の“ザラキ”をかけまくるんです。結果的にザラキしか使えない“愛すべきポンコツ”と呼ばれるようになっていきましたね」(同)
そんなポンコツAIの行動は、ふとした時に人間味も垣間見せる。
「クリフトはサントハイムのお姫様・アリーナの付き人なんですが、戦闘でアリーナが少しでもダメージを受けると、すかさず回復呪文をかけます。付き人とお姫様の関係性と紐付けて“アリーナを慕い、守りたくてしょうがないクリフト”なんて想像を働かせていましたね」(同)
事実、こんなクリフトの行動から触発されたクリエイターも多く、ドラクエ4を舞台にしたコミック作品や同人誌にはアリーナとクリフトの恋愛を描いた作品も多かった。