■AIが見つけたメタル狩りのスーパーテクニック

 ファミコンAIの行動は、時に予想のつかない動きを見せ、プレイヤーを驚かせた。

「命令を『いろいろやろうぜ』に設定していたとき、仲間がはぐれメタルにいきなりせいすいをふりまいたときは、ビックリしました。どんな攻撃も効かないはずのはぐれメタルに二桁ダメージを与えて一撃で粉砕。子供心ながらに、“はぐれメタルって、せいすいが効くんだ”って腰を抜かしました」(週刊誌編集者)

 この仕様は強力過ぎたからか、後のシリーズでは修正された。もちろん、こうした嬉しい誤算ばかりではない。

「呪文を反射するマホカンタという呪文があって、敵が使うと、こちらの攻撃呪文が跳ね返されてしまうんです。本来なら呪文を使わない方がいい場面なんですが、AIが勝手に判断して強力な呪文を打ってしまい、大ダメージが跳ね返ってきてパーティ全滅のピンチという悲劇が起こることがあります」(前出の林田氏)

 だがこうしたAIの不器用さが、当時のプレイヤーたちにとってはキャラクターへの愛着を深めるきっかけとなったようだ。

「キャラクターのポンコツな行動や、不器用に仲間を助ける様子が、“もしかしたら本当に性格や個性を持っているのかも”と思わせてくれました。そういったキャラの愛らしさが親近感を生み、今なおコアなファンに愛される作品になっています」(前同)

 平成初期におけるファミコン時代の“愛すべき失敗”。それは、人とAIの関係が、まだどこかぎこちなくも温かかった。

クンダリーニ林田
雑誌、書籍、Webなどさまざまな媒体で記事を執筆するライター、編集者。ゲーム記事も多く手掛け、レビュー、開発者インタビュー、その他コラムなど内容は多岐。ファミコン誕生と同時期にゲーム歴がスタート。80年代よりゲームの歴史、変遷について目の当たりにしてきた。特に思い出深いハードはXBOX360。