■『御上先生』が描いた令和の“シン官僚像”
こうした流れの中で、にわかに注目を集めているのが、3月23日に最終回を迎えたTBS系ドラマ『御上先生』です。全話平均世帯視聴率10.8%という高視聴率をマークした同作は、松坂桃李さんが演じる東大卒の「文部科学省エリート官僚」が出向で私立高3年の担任教師になったことを機に、生徒を導きながら教育制度を現場から壊して権力に立ち向かう物語。
令和の18歳とともに、日本教育にはびこる腐った権力へ立ち向かう大逆転教育再生ストーリーでした。
この設定だけを聞けば一風変わったドラマのように思えますが、その描写は驚くほどリアルで、官僚という存在の本質に切り込んだ作品として高い評価を受けました。
特に松坂さんの演技には、従来の官僚像を更新するような説得力が十分。
「『御上先生』はこれまで『官僚=悪』として描かれることが多かったドラマの風潮とは一線を画していました。特に最終回は、SNS上でも“神回”と評され、Xでは『#御上先生』がトレンド1位になるほど大盛り上がり。
感情的な対立を抑えつつ、制度的な問題点を冷静に分析し、未来を担う生徒たちに希望を与える御上の姿は、まさに“今、官僚に求められている姿”そのもの。ネット上では『実際の社会でもこんな官僚がいてくれたら』『こんな官僚ばっかりだったら本当に日本は変えられるよね』といった感想が多数寄せられていました」(テレビ誌記者)
民間企業が賃上げを競う一方、国家公務員の待遇改善は遅れているとの指摘もあり、人事院の有識者会議「人事行政諮問会議」はキャリア官僚らの報酬を大企業に準じて決めるよう求めています。
霞が関に優秀な人材を集められるかどうかは、日本にとって国際競争力を左右する命題。過去にはドラマ『3年B組金八先生』シリーズが放送されるたびに、「金八先生」に憧れて教師になった人がいるとの話も聞かれましたが、「御上先生」は官僚のなり手不足の一助になるのでしょうか。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。