■今後、石橋は旅行が難しくなる理由
――今後の治療はどうなるのでしょうか。
「まず、手術自体は終わりましたからね。喉頭だと声を失う可能性もあったわけですから、そこは良かったですよね。
一般的に、食道がんは術前化学療法を2回ほどやるんです。胃がんなどは抗がん剤などせず早めに手術するんですが、食道がんの場合は先に抗がん剤を試すことが多いんです。
要するに、外科医の判断では、最低限の抗がん剤治療を行なうとがん組織が締まって、手術しやすくなると。おそらく石橋さんは、手術前に抗がん剤治療を受けていると思います。
あまり広がっていなければ大手術明けには退院を待つだけですが、1か月くらいで病理医から詳細な情報が明らかになった際、リンパ節にかなり転移していたら、抗がん剤治療を勧められる場合もあります。そういう意味では石橋さんは、その病理の結果が出るまで安心はできないかもしれませんね。
また、咽頭を切ったことで嚥下障害が起こるかもしれません。食道離断術で胃を筒状に吊り上げて代用食道にすると、“弁”がないため逆流するんですよね。胃の内容物がすぐ口に落ちてしまうので、苦しいんですよ。石橋さんも聞いてはいると思いますが、そういう後遺症に苦しむことになるんですよね。
あと、胃を食道にすると“貯めるところ”がなくなるので、術後10年経った人でも、1日の食事を10回に分けて食事をしなければいけない人もいますね」
――食事が難しくなるんですね。
「平均で10キロは体重が減りますね。胃を吊り上げて小腸につなげるので、消化する場所が無いから大変なんです。その後、体重が戻る人もいるので個人差ではありますが。
結局、後遺症をどう凌いでいくか、ですね。再発は避けたいですが、術後の後遺症とどう向き合うか。“根治すれば大丈夫では”と思う人もいるでしょうが、後遺症は体験して初めて分かることです。それから、旅行が難しくなりますね……」
――それはなぜでしょうか?
「寝ると、身体が水平になりますよね。食道離断術で胃を筒状に吊り上げて代用食道にした方は胃液が口まで逆流して眠りにくいんですよ。自宅では、傾斜をつけられるベッドなどで頭を高くして眠るなど工夫できますが、旅先では特別なベッドなどはないですからね」