■シニアエピに若者はついてこられるのか

 長倉家に千明の友人、さらに職場のスタッフたちなど演者同士のやりとりが絶妙な間でしっかりハマっていて、場面の切り替えもリズム良くて効果的。前期から11年の時を経て、年を取ったキャラそれぞれの現在の立ち位置も、ユーモアを交えながら過不足なく描ききって、文句なしの初回だった。

 視聴者の年齢層のメインとなる50代は、若者と違ってテレビの視聴習慣があるため、視聴率の高さはある程度は予想できた。しかし、いきなり2ケタに迫る数字というのは、それ以外の層も見ていた可能性が高い。11年ぶりの作品という話題性から、とりあえず試しにと、前作は未経験の“若い一見さん”も見たのではないだろうか。

 そうなると気になるのが、シニア専用と呼びたくなる、初回のエピソードの数々だ。何もないところでつまづいたり、年齢の近い知人の死に思いをめぐらせたりと、50代以上には身に覚えがあってしみる内容だったが、若者に響いていたとは思えない。ある意味、若者を切り捨てた作りとも言え、それはそれで潔いのだが……。

 Xでも《このドラマはほんわか日常系》と指摘されているように、今後も派手な出来事が起こることはなく、共感できる日常と、シニアにしみるエピソードが展開されていくのだろう。そのときシニアではない若い“一見さん視聴者”が、どんな反応をするのか興味深い。

 とはいえ、本シリーズが良作であることは間違いなく、意外と全世代に響くということも、十分あるだろう。次回は新キャストの三浦友和(73)と石田ひかり(52)が、それぞれ千明(小泉)と和平(中井)に関わってくる。2人が大人の人生のストーリーラインに、新たな息吹を吹き込んでくれそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。