■さすがに「もう難しい」背景に潜む“中居騒動”
ただし、コンプラ意識が加速度的に高まる現代社会。なぜそれでもテレビ局は、暴行疑惑や非難を浴びる言動を繰り返してきたデヴィ夫人の起用を続けてきたのか。
「暴行疑惑の報道が出た後、視聴者からも今までの局の姿勢を問う声が噴出している状態のなかで、局としてもこれまで通りの起用というわけにはいかなくなったと思います。というのも、中居正広氏の騒動から急激にテレビ局の人権配慮が問われてきている。デヴィ夫人は“ユニークなセレブ”キャラとして視聴者を煙に巻いてきましたが、さすがにもう難しいのでは」(前出の鎮目氏)
さんざん炎上するも、デヴィ夫人への扱いを変えなかったテレビ局。ようやく動かざるを得なくなりそうな背景には、結局「スポンサー」の影響が大きいという。
「テレビ局が戦々恐々とするのは、スポンサーです。そして、2023年のジャニー喜多川氏の性加害報道あたりから、スポンサーの人権基準が圧倒的に厳しくなりました。さらに中居氏の騒動と第三者委員会による報告書もあり、テレビ界全体のパワハラ・セクハラ体質が問題視されています。
人権尊重をうたうスポンサー企業にとっても、番組内容に関してはある程度局任せだったところが、CM出稿を取りやめるという判断を下すようになり、そうなると局としては番組を作れなくなる。今のフジがいい例です」(同)
デヴィ夫人は犬猫の保護に特化した政党「12(ワンニャン)平和党」を立ち上げ、今夏の参院選に出馬する意向。ネットには《犬猫保護よりも自分の行動、人の扱い方を学ぶべき》《犬猫は守るけど、人間には暴行するのか》などと厳しい声が寄せられている。
鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)