■手術しまくるだけの松本若菜

 それは、オーバーアクションな佐野と唐突な展開に対するもので、《佐野くんの役がいちいち大声で叫びまくっててまじ不快。やかまし過ぎてもうキツい》《「修羅場に立つ資格ナシ」と研修医を断じたクセに、次のシーンでトンネル崩落現場という修羅場オブ修羅場に連れていく。脚本家はなんとも思わんのか》などの声が。

 たしかに、展開がガチャガチャした印象があったが、それは脚本と演出が漫画原作に忠実であろうとしたためかもしれない。しかし、ドラマ化するにあたり、手を入れたほうがいいところは変えるべきだろう。

 たとえばキャラ造形。救急科の科長・大黒(田辺誠一/56)の髪型と、外科科長・金剛(鈴木浩介/50)のヒゲは、原作に忠実かもしれないが、あきらかなお笑いキャラになっていて、空間の緊迫感を削いでいた。また、金剛が「違う」を連発するのも、“そこで笑いをとってどうするの?”というちぐはぐさを感じた。

 また、佐野演じる研修医・薬師寺も、原作ではここまでわめきちらしていない。自信のなさからくる焦りを表現したかったのかもしれないが、単にうるさいだけになってしまったのは残念。公式サイトでは「エンタメ」という言葉がやたら使われているが、エンタメ性のさじ加減を間違えているようにしか思えない。

 その結果、初回は、松本演じる朱羅が、必死の形相で心臓マッサージをしていただけの印象しかない。シリアスからコメディまで演技の幅が広い松本なのに、さまざまな感情を表現する機会を与えられず、ムダ遣い感が強かったのは残念。これまで出るドラマがどれもヒットしてきた松本だが、ついに黒星がつきそうだ。

 次回、朱羅にとっての師匠である元救急科科長・多聞真(渡部篤郎/56)が、海外から帝釈総合病院に返ってくるが、朱羅に「救急科は近いうちに閉鎖する」と告げるという。今後は朱羅と多聞との関係が物語の軸になりそうだが、ひたすら手術しまくるだけではない、人間的な深みの感じられる展開に期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。