■『恋は闇』が狙う新しいミステリー

 視聴率の数字が伸びなかったのは、裏で松本若菜(41)主演の『Dr.アシュラ』(フジテレビ系)が放送されていたことや宣伝不足など、さまざまな原因はあるだろう。だが、一番大きいのは、ミステリーかと思いきや、万琴(志尊)と浩暉(岸井)の関係に加え、万琴と親友の看護師・内海向葵(森田望智/28)、友人で刑事・小峰正聖(白洲迅/32)との三角関係など、恋愛要素が多めだったことではないか。さらに、メディアの報道姿勢について延々と展開したことで、物語の焦点をボヤけさせてしまったことだ。

 しかし、これは初回だからこそ必要だったのかもしれない。スタッフは同局の話題作『あなたの番です』、『真犯人フラグ』チームで、放送前から考察を煽る予告動画を配信しており、基本は考察ミステリーなのは間違いないだろう。事件報道については、殺人事件と巧妙に絡ませ、恋愛要素は視聴者をミスリードさせるための仕掛けとして用意されているのではないか。

 特に恋愛要素は強力な仕掛けになりそうだ。志尊、岸井、森田、白洲と役者は揃っているし、ドキドキ、キュンキュンさせておいて裏切るという、新しいタイプの考察ミステリーを目指しているのだろう。そうでなければ、『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)など、恋愛ドラマを多く手掛ける渡邉真子を脚本に起用しないはず。初回の焦点が定まらない感じは、すべてこれからの考察を盛り上げるため、必要なことだったと思われる。

 また、サブキャストでは、『宙わたる教室』(NHK)で負のスパイラルから抜け出せない不良を演じて話題になった小林虎之介(27)の評判がいい。旬な小林が演じるのは、万琴の後輩で新人ディレクター・木下晴道で、事件はもちろん、恋愛にも絡んでくるかもしれない。キュン+考察の新たなドラマに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。