■注目を集めているもう1人の女優
『おむすび』は、高校時代に“ギャル文化”と出会った平成元年生まれの主人公・米田結(橋本)が栄養士として人の心と未来を結んでいくという、食をテーマにした“平成青春グラフィティ”作品。
しかし、序盤戦に多く登場した“ギャル”が不評だったことに加えて、物語のダイジェスト感がかなり強く、メインであると思われた主人公が栄養士になるまでと、なって以降があまり描かれないという“薄口シナリオ”の評判が悪く、視聴率は序盤から大苦戦。それまでの朝ドラ史上ワースト視聴率は倉科カナ(37)主演の『ウェルかめ』(09年度後期)の13.5%(全話平均の世帯視聴率/関東地区/ビデオリサーチ調べ)だったが、『おむすび』は13.1%と、ワースト記録を更新してしまった。
一方、『あんぱん』はまだ始まったばかりだが、第2週の視聴率が15.3%。『おむすび』の第2週は14.7%で、第1週の『おむすび』が16.1%、『あんぱん』は15.2%だったので、第2週で『あんぱん』が『おむすび』を逆転したことになる。
今田と橋本の違い――長年の朝ドラウォッチャーであるドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。
「橋本さんはコミックが原作の非現実的な作品には強いですが、リアルな日常を描いた作品には難がある印象がありました。『おむすび』の結は後者だったので、やはり視聴者からの厳しい声が多くなった。
では今田さんはどうかというと、元気だったり、気が強かったりするキャラは得意でも、シリアスなキャラには苦戦している印象です。その点、『あんぱん』ののぶは“ハチキン”で“韋駄天”というキャラなので、ハマることは間違いないと思われます。
ただ、不安点もあって、制作統括の倉崎氏が制作発表会見で“今までの朝ドラ以上に戦争というものをちゃんと日数を使って描いております”と語っていることです。シリアスな演技を求められるシーンが長くなるわけで、ここで俳優としての成長を見せてくれるかがカギになるでしょう」
そんな今田の演技が好評の『あんぱん』だが、同作には彼女に負けず劣らず、視聴者の間で話題になっている女優がいる。
「のぶの妹・蘭子を演じる河合優実さん(24)の色っぽさ、抜群の存在感が注目されていますよね。15日放送回では朝田家で石膏見習いとして働く青年・原豪(細田佳央太/23)といい雰囲気にあることが示唆されるシーンがありましたが、そこでの演技がとにかく素晴らしかったですね」(前出のテレビ誌編集者)
視聴者から関心が寄せられたのは、パン食い競争の出場受付をしていた蘭子のもとに、豪がやってくるシーン。そこで「応援するきね」と話す蘭子に、「脚が遅いから(応援)しないでください」と豪が言う。それを「力は強いのに」とつぶやき、髪をかき上げる――という一連の場面には、
《河合優実さん演じる蘭子の、ただ髪を撫で付けるだけの仕草が情感たっぷりで最高すぎた》
《彼女が髪を指で分けただけ…で、色気を出す神演出いや、色気を出せる河合優実…》
《河合優実さん、おしんの頃の田中裕子さんみたいな何とも言えない色気を感じる》
といった、彼女の色気を絶賛する声が多く寄せられた。
「河合さんは主演映画『ナミビアの砂漠』(24年公開)でも体当たりの演技が評価され『第67回ブルーリボン賞 主演女優賞』など多くの映画賞を受賞。いま最も勢いに乗っている女優の1人です。溌剌とした演技、存在感が高く評価される今田さんだけでなく、艶も表現できる河合さんも妹役で出演している『あんぱん』が『おむすび』を上回るのは、必然だったのかもしれませんね。ドラマももちろん楽しみですが、毎朝2人を見たい、という気持ちになりますよね」(前同)
“旬”の輝きを見せる今田と河合が引っ張る『あんぱん』は、史上ワースト視聴率を記録してしまった『おむすび』のようにはならなさそうだ。
ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。