■松嶋の“大ヒット過去作”を思い出す声も

「『あんぱん』での松嶋さんは着物姿ですが、相変わらずスタイル抜群。長身で美しく着物を着こなしており、視聴者に絶大なインパクトを残しています。主演の今田さんがお転婆系ヒロインであることもあって、松嶋さん演じる登美子の上品さ、妖艶さが際立っているようにも見えますね。

 また、単なる憎まれ役という感じでもなく、登美子は、夫(加瀬亮/50)の死を受けて働く道を選んだのぶの母・羽多子(江口のりこ/44)と対になっているところもあり、“何かにすがり続けることでしか生きられない女性”という存在にも見える。この絶妙な演技も評価されているのではないでしょうか」(テレビ誌編集者)

 夫(二宮)の死後、裕福な家に嫁いだ登美子の姿に、かつて松嶋が主演ドラマ『やまとなでしこ』(フジテレビ系/00年10月期)で演じた貧乏嫌いの主人公・神野桜子を想起した視聴者も少なくなく、《「やまとなでしこ」出演の時を彷彿させるんだよなぁ》といった声が出るなど、最近の『あんぱん』では松嶋、そして登美子が話題の中心となりつつあるのだ。

「『あんぱん』は幼少期編を経てキャラが成長し、第3週から主演の今田さん、妹役の河合優実さん(24)など20代のメインどころの俳優の存在感が回を追うごとに増している感じでしたが、ここにきて松嶋さんの悪女ぶりが、それ以上の注目を集めてしまった感じですね。もしかすると、制作サイドとすれば、松嶋さんのここまでの存在感は想定以上、誤算だったのかもしれませんね……」(前同)

“主役食い”の存在感を見せつける松嶋について、長年の朝ドラウォッチャーであるドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。

「登美子は視聴者から嫌われて“顔を見たくもない!”と言われてもしょうがない言動が続いているのに、なぜかその姿に惹きつけられる。その理由は、松嶋菜々子さんの絶対的な美貌にもあると考えられ、特に目力にキレが出てきているからではないでしょうか。だから、戸田菜穂さんとバチバチの対決シーンで、熱演で圧をかけなくても、目だけで闘争心を表現できる。

 そういうしなやかな演技で勝負できるのですから、“熱演一本槍”の今田さんが食われたように見えるのかもしれませんね」

 序盤で一時退場し、再婚相手と離縁したことで再登場した登美子。このまま居候を続けると、視聴者はより松嶋の姿を求めてしまうことになるかも――。

ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。