日々流行の最先端を分析するトレンドウォッチャーの戸田蒼氏。そんな戸田氏が今、注目するのは関西の春の風物詩である『イカナゴのくぎ煮』。関西では家庭の味として親しまれてきたイカナゴが不漁に悩んでいると知っていましたか。

 神戸を中心に兵庫県各地で代々受け継がれてきた郷土料理である『イカナゴのくぎ煮』は、甘辛い味付けで炊き上げられた小魚の風味が特徴で、地元の人々にとっては特別な季節の味として根強い人気を誇ってきました。しかし近年、その主役であるイカナゴが極端に獲れなくなり、「春の風物詩」が姿を消しつつあります。

 かつて年間1万トンを超えていたイカナゴの漁獲量は、2017年を境に激減。24年には兵庫県全体でわずか25トンしか水揚げされないという記録的不漁に陥りました。イカナゴのくぎ煮は親戚や友人に贈る文化も根づいており、それができない寂しさが地域全体に広がっています。

 こうした極端な不漁の原因は何なのか――。『よんチャンTV』(毎日放送)の特集によれば、「海が綺麗すぎることも関係している」との意外な指摘がなされています。高度経済成長期以降、日本の海は下水処理技術の発展により劇的に清浄化されました。その結果、プランクトンの発生に必要な栄養分である窒素やリンが不足し、稚魚の餌が足りなくなっているというのです。