■吉野家に迫るさらなる値上げの危機
アメリカでインフレが起これば、トウモロコシの価格上昇は必須。餌を輸入品に頼っている養鶏や畜産の分野は大きな影響を受けるのは必至。たまごや和牛の価格が高騰する恐れも。
「吉野家が用いるアメリカ産牛肉は、畜牛の群れの減少や西部での長引く干ばつが重なり、並盛が税込み498円と、過去最高水準の値段を記録しています。アメリカでは若齢牛をカナダに送って育て、本国に戻す形で牛を育てる場合も多いのですが、今回のトランプ関税はこうしたシステムを崩しかねません。米国産牛肉がさらに高くなれば、牛丼チェーンにとって、最悪の状況。吉野家の値上げも待ったなしです」(外食産業関係者)
水産物の分野では早くも『ホタテ』にも大きな影響が出始めています。これまで無関税だったホタテの輸出に10%の関税がかかり、さらにそれがトランプ大統領により24%に引き上げられました。価格上昇を嫌ったバイヤーの購入量が減るため、「必ず影響は出る」と関係者も危機感を示しています。
「もともと日本からアメリカへのホタテ輸出が急増した背景には、中国による日本産水産物の輸入停止措置がありました。福島第一原発の処理水放出を理由に、中国向けに出荷できなくなったぶんを日本国内で加工し、アメリカ市場に切り替えていた。そのため、工場の衛生基準をクリアするための新設工事も始まっていましたが、その矢先に関税の引き上げが発表され、業界内では困惑の声が上がっています」(前同)
一方で、「価格が下がるかもしれない」と見られているのが『海苔』です。中国からアメリカへ輸出されている海苔に対して、トランプ大統領は最大125%という非常に高い関税をかける見込み。専門家は中国が給先をアメリカから日本へと切り替えれば、日本国内に出回る海苔の量が増え、価格が下がると指摘しています。
もちろん、アメリカの関税政策は国内外の経済状況や政治情勢によって変化するため、現段階で見通しを立てることは困難です。しかし、グローバル化が進んだ今の時代、私たちはますます政治と経済の動きを“自分ごと”として受け止める必要がありそうです。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。