■まさに橋本環奈の真骨頂

 笑って、飛び跳ねて、コケて、落ち込んでと、鷹央を演じる橋本はまるで水を得た魚のようで、“ハシカン劇場”といっていいほど。もともと、小柄なわりにメリハリある体のうえ童顔の橋本は、現実離れした役をやらせると抜群。これまでも映画『銀魂』の神楽や『キングダム』の河了貂など、現実離れしたキャラを演じると、急に輝き出していた。

 加えて本作で演出を担当する木村ひさし氏は、『TRICK』シリーズ(テレビ朝日系)や『99.9-刑事専門弁護士-』シリーズ(TBS系)など、飛び道具的な演出を得意としている。その意味で『天久鷹央の推理カルテ』はまさにピッタリの内容で、視聴者に好評なのも当然だ。

 これと対照的だったのが、前期NHK朝ドラ『おむすび』だ。朝ドラのヒロインはリアルな人生を生きるキャラなので、独特な個性を持つ橋本が演じても、説得力が感じられないのも仕方ないことだった。朝ドラの史上最低視聴率を記録したのも、そもそも、橋本のミスキャストが原因だったといえそうだ。

 橋本とバディを組む三浦翔平も、21年7月期『ハコヅメ ~たたかう! 交番女子~』(日本テレビ系)で演じた刑事・源誠二など、シリアスからコメディまで演技の幅が広く、本作も初回から橋本の演技を受け止め、絶妙なグルーブを生んでいた。橋本演じる鷹央がどんな診察と推理で事件を解決していくのか、今後も期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。