■『キャスター』の設定がそもそも間違い?

 視聴者の指摘にもあるが、気になるのが初回からずっとストーリーが散漫なこと。今回は細胞組織研究所の研究員・篠宮(のん)と栗林准教授(井之脇)で展開させるのかと思えば、高坂教授(利重)が絡んできて、全体に薄味になっていた。これは、現実に起こった事件をベースにするという、そもそもの設定が原因のようだ。

 現実にあったことをベースにするのはキャッチーで、確かに視聴者の目を引けるだろう。しかし、そのままドラマにしても平板になってしまうから、オリジナル要素を入れた脚色が必要になる。栗林に加えて高坂を事件に絡めたのはそんな脚色のひとつなのだが、そのため、ストーリーが散漫になってしまった。

 しかし、現実をよりドラマチックにするため、脚色でもっと手を加えるとしたら……たとえば篠宮を厳しく追い詰めるような展開にしてしまうと、現実のモデルがいるだけに、その印象が悪くなる。やらなくてもダメ、やりすぎてもダメ、加減が難しいのだ。実際の騒動をベースにするという前提自体が、そもそも悪手だったのではないだろうか。

 本作の放送前の4月23日、永野芽郁の二股不倫疑惑の報道があったため、X上では《ドラマに集中できない》という声も上がっていた。散漫なストーリーに加え、二股不倫疑惑がチラつくようでは、余計に楽しめないだろう。父親の死の真相という、進藤(阿部)の過去に関する本筋が動き出すまでは、つらい状況が続きそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。