■しばらく続きそうな河合優実の主役状態

 とにかく、河合の演技が圧倒的だ。第3週のパン食い競争で見せた、豪(細田)への秘めた恋心の演技が印象的だったが、表情ひとつで表現する情報量がものすごく、のぶの背後で話を聞いている姿でさえも、見ようとしなくても目が引きつけられてしまう。今週の縁談話をめぐる演技でも、演技がストレートな傾向にある今田を完全に食っていた。

 気になるのは今後の展開で、物語に戦争が影を落としてきている。脚本の中園ミホは、マイナビニュースのインタビューで“戦争”について、「しっかり時間をかけて描きます。反対意見もありましたが、やなせさんを描くということは戦争を描くということですから」と語っており、本作が“逆転しない正義”とうたっていることもあり、これからの戦中編は長めになると思われる。

 史実では、やなせたかしは従軍するものの生きて帰るが、弟は太平洋戦争で戦死しており、ドラマもかなり重い展開になりそうだ。第6週で想い人である豪に召集令状が届き、出征していくため、蘭子の悲劇が描かれることになるだろう。しばらくは、河合のヒロイン食いの圧倒的演技が見られそうだ。

 その一方、のぶは女子師範学校で軍国教育を叩き込まれており、蘭子に悲劇が訪れたとき、対立する場面もあるかもしれない。2人が並ぶとますます河合が際立つことになりそうだが、今田にもヒロインとして、河合に負けない演技を期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。