■まだ明るい雰囲気の『めおと日和』だが…

『あんぱん』の今後の展開には、脚本担当の中園ミホ氏も4月26日配信の『婦人公論.jp』にて、《『あんぱん』は、今年が戦後80年ということを意識して書いています。 皆さんが驚くぐらいしっかり戦争を描きます。反対意見もありましたが、やなせさんを描くってことは戦争を描くということですから》と語っている。

「戦争が迫ってきた時期を描いた第5週(4月28日~5月2日)では、のぶ(今田)と一緒に女子師範学校に進学した幼馴染のうさ子(志田彩良/25)があっという間に軍国主義に染まっていく姿が描かれました。さらにのぶまでそうなりそうな感じで揺らぎ始めていて……この流れも、戦争の足音が近づいてきている薄気味悪さが上手く表現されていて、リアルな感じでしたよね。

 これからさらに描かれるであろう戦争での悲劇もそうですが、こうした辛くて恐ろしい出来事をしっかり描くことで、対比として、その後の幸せや日常の大切さも際立つことになるのではないでしょうか」(前出のテレビ誌編集者)

『あんぱん』と比べると『めおと日和』は大筋こそ明るいが、ところどころにやはり暗いものを感じさせる。

「第1話で瀧昌(本田)が夫婦の営みを“急ぐことではない”と言ったら同僚・深見(小関裕太/29)に“先がいつなくなってもおかしくない仕事だって自覚があるんだと思ってた”と言い返されるなど、やはり“平和な時代”ではなかったことを再認識させられる描写も多いですね。

 また、瀧昌がしばらく帰れなくなるような任務に送り出されることも頻繁にあり、そのたびに無事を祈る妻・なつ美(芳根)の姿も胸に迫るものがあり、日常の何気ないシーンの幸せを強く感じさせます」(前同)

『あんぱん』と『めおと日和』には、

《めおと日和もあんぱんも戦争のない世界で話が進んでいけばいいのに》
《あんぱんもめおと日和も同じ時代の設定なんだね!あんぱんは来週から戦争絡んできそう…しなないで》
《もうすぐ朝ドラもこのドラマも戦争が始まる…。嫌な時代やわ…》
《待って、戦争と被るんですかつらい そして同時に朝ドラもそうだ》

 といった、戦争が描かれることへの恐怖心が多く寄せられている。

『あんぱん』と『めおと日和』と「戦争」――これまでも多くの昭和が舞台の作品をウオッチしてきたドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。

「真正面から戦争を描こうと取り組んでいる『あんぱん』と、戦前のなんでもない日常の尊さを際立たせようとしている『波うららかに、めおと日和』は、同じ昭和初期を舞台にしているのに対照的なドラマです。

 これは、前者の脚本家・中園ミホ氏が“モデルのやなせたかしさんを描くということは、戦争を描くこと”だと語っていることと、後者の原作者・西香はち氏が”舞台が戦争にかからない方がいいと思い、昭和11年にした”と語っていることからもわかります。

 それが、『あんぱん』では今後、戦死の知らせが悲しみを呼ぶ展開が匂わされ、『めおと日和』は演習に出かけた夫が無事に帰ること願っているだけという、“待つ女性”の姿の描き方の違いにも、大きく表れていると思います」

 放送中のドラマで視聴者の満足度が高いと言われている『あんぱん』と『めおと日和』。戦後80年に描かれている両作を見て、あらためて戦争について考えるのもいいことかもしれない。

ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。