■あるあるで終わらない『対岸の家事』

 今回も育児経験者なら身に覚えがありすぎる描写が多く、特に礼子(江口)への共感の声が多く集まっている。いわゆる母親“あるある”で、家事や育児を手伝わないのに、自分の立場は主張する、量平(川西)のふるまいや言葉にイライラしながら、多くの視聴者が共感したようだ。

 しかし、本作の魅力は“あるある”だけではない。Xにも指摘があったが、“どんな立場の人物にも細やかで温かな視線を向けているところ”でもあるのだろう。家事をやらない夫や、共働きに理解のない同僚、それぞれの立場を説明し、ちゃんと相手を理解する方向に落としこんでいるのだ。

 ドラマとしては、わかりやすい悪役を作るのは簡単だし、物語を盛り上げやすい。しかし、それ以上に、それぞれの立場を理解して、お互いの落としどころを見つけていくほうが、絵空事ではない。よりリアルな表現になる。それによって、本作は育児経験者はもちろん、そうでない視聴者からも共感を得ているのだろう。

 それぞれの理解が深まった詩穂(多部)、礼子、中谷(ディーン)の3人とそのパートナー。次は、詩穂を逆恨みするシングルマザーや、詩穂と絶縁状態の父親(緒形直人/57)が出てきて、不穏な感じになりそうだ。この2人との関係を、どう扱うのかも気になるところだ。(ドラマライター/ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。