■つい感情移入してしまう『あなたを奪ったその日から』
これは、演出の効果によるものだろう。そもそもの設定が、“誘拐した他人の子を勝手に感情移入して育てている”という時点でどうかしている。しかし、本作は北川景子のモノローグや心理描写がやたら多いうえに、ほかのキャラの背景説明をほとんどしていないため、視聴者は主人公の視点でドラマを見てしまう。視聴者=紘海になるよう、制作側が周到に仕掛けているのだ。
その演出効果によって、不可解な展開にモヤモヤしつつも紘海と美海の2人の行く末が気になり、ツッコミを入れながらも、ついつい物語にハマっていく。もちろん、北川をはじめとする俳優陣の熱演によるところも大きい。それらがうまくハマり、前述のようにTVerでは順調にお気に入り登録数を伸ばしている。
次回は、旭の長女・梨々子(平祐奈/26)の家庭教師をしていた玖村(阿部亮平/31)と偶然出会った紘海が、旭が新業態スーパーを立ち上げ、精力的に働いていることを知り、再び怒りが湧き上がる。今後、物語は本格的な復讐篇に入りそうだが、こちらもまた、ツッコみながらも、ついつい見入ってしまいそうだ。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。