■番組開始初の世帯16%台を叩き出した
『あんぱん』は5月2日放送回が世帯16.5%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)で、番組最高を更新。朝ドラの世帯視聴率が16%台に乗るのは橋本環奈(26)主演の前作『おむすび』の第5話(24年10月4日)の16.2%以来、およそ7か月ぶりだった。
そんな最高視聴率回が放送された『あんぱん』の第5週(4月28日~5月2日)は、蘭子(河合)と豪(細田)の恋愛が描かれた週だった。蘭子がのぶの同級生で金持ちの岩男(濱尾ノリタカ/25)に求婚されるが、豪に「うちの縁談どう思う?」と尋ねても「お金持ちやし、ええ話やと思います」と言われてしまう。その場では「そう? そうでね」と寂しそうに笑う、というシーンが描かれたのだ。この場面でも、河合の絶妙な表情の変化が注目を集めた。
5月8日発表のコメントで、細田は上記の求婚シーンについて、こんな裏話を明かしている。
《豪としてはもう心臓がバックバクで(笑)。その後、出勤する蘭子さんが作業場の横を通る時に、演出の方から『石を叩く音で感情を表現してほしい』と言われ、豪の動揺を音で表現した場面もありました》
また、細田は5月8日に放送された、豪が蘭子に告白する場面を振り返り、
《一緒にお芝居をしていると、より集中して意識を広げないといけない瞬間がたくさんあり、すごく背筋が伸びる感覚があります。それが楽しいですし、刺激をもらえる方ですね。このシーン(※蘭子に告白するシーン)の撮影も、河合さんとのお芝居で生まれるものに従おうという気持ちだったので、細かいことや方言すらも一切気にせずに臨みました》
と、河合を絶賛するコメントも寄せている。
主演映画『あんのこと』(2024年)の演技が評価されて『第48回日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞』に輝くなど、女優として勢いが止まることのない河合の魅力を、長年の朝ドラウォッチャーであるドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。
「前期の『おむすび』でも、姉役の仲里依紗さん(35)がヒロイン・橋本環奈さんを食っていたと話題になっていましたが、163センチの仲さんと152センチの橋本さんの身長差が、その要因の一つだったと考えれば、『あんぱん』でも9センチの差がある河合さんと今田さんにも、同じことが当てはまっているのかもですね。
今田さんが前面で話していても、その背後でピントさえ合っていない河合さんに目が行ってしまうのは、繊細な所作の演技はもちろん、その立ち姿そのものが強いということでしょう。
今後、戦争が描かれる中で、河合さんは蘭子の悲しみを演じることになると思われ、ヒロインである今田さん以上に注目が集まり、ドラマの視聴率を引き上げる原動力となりそうです」
5月8日放送回は豪と蘭子が幸せそうに汽車に揺られる場面で終わった『あんぱん』。河合演じる蘭子の幸せそうな笑みが、今後も見られると良いのだが……。
ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。