■これからは戦争のリアルが描かれる

 のぶと嵩を『あんぱん』では幼馴染にした理由を、中園氏は4月26日配信の『マイナビニュース』インタビューで明かしている。

 インタビューによると、中園氏はやなせさんから、子どもの頃に元気な女友達がいたことを聞かされていたこと、生い立ちから幼少期はとても寂しかったのではと推察し、オリジナル設定で2人を幼馴染にしたという。

《もし暢さんが近所に住んでいて、その頃知り合っていたら、こういう会話をしたのではないかと、オリジナルで作らせてもらいました》
《(のぶの存在は)元気のいい明るい女の子がそばにいてくれたらいいなという私の願望も入っています》

 ちなみに、『あんぱん』には嵩の母親・登美子役として松嶋菜々子(51)が起用されたことも話題になったが、これは松嶋が中園氏脚本の名作ドラマ『やまとなでしこ』(フジテレビ系/00年10月期)で主演を務めた縁によるものであることも明らかとなっている。

「中園さんは米倉涼子さん(49)主演の『ドクターX』シリーズ(テレビ朝日系)や吉高由里子さん(36)主演の朝ドラ『花子とアン』(14年前期)など数多くの名作を手掛けてきた大ヒットメーカー。“取材力の中園ミホ”と評されるほど綿密なリサーチをして、作品にリアリティを与えることで知られています。『あんぱん』が面白いのも、納得ですよね。

 ただ、これから先の『あんぱん』は“戦争のリアル”が描かれることになるでしょう。序盤はフィクション要素を強めに、“即席石窯であんぱんを焼く”などファンタジー感もありましたが、ここから先は太平洋戦争が控えています。辛い話が続きそうです」(前出のテレビ誌編集者)

 今年が戦後80年という戦争を見つめ直す節目の年であることに加えて、『アンパンマン』の根底には、やなせさんが悲惨な戦争を通じて学んだ「飢えた人に一切れのパンを与えることは、揺るがない正義」という哲学が込められている。

 そのため、中園氏は《『あんぱん』は、今年が戦後80年ということを意識して書いています。 皆さんが驚くぐらいしっかり戦争を描きます。反対意見もありましたが、やなせさんを描くってことは戦争を描くということですから》(『婦人公論.jp』、4月26日配信)とコメントしている。

「『あんぱん』の“戦争編”はここから6月中旬まで1か月以上かけて描かれ、その間には目を背けたくなるようなむごくて、悲しい展開もあると見られます。しかし、そこに脚本家の中園さん、そして制作サイドが、視聴率などを度外視しても伝えたい大切なメッセージが込められているのではないでしょうか」(前同)

 嵩役の北村は戦争編を《今後の柳井嵩を作り上げる重要な要素がたくさん詰まっているパート》《成長ではなく達観していく》と評し、リアリティーを持って向き合う決意をコメントしている。明るく楽しい、ではない『あんぱん』も、見逃せないだろう。