■多部のドラマにハズレなし

『対岸の家事』の第7話(5月13日)では、詩穂(多部)の専業主婦の先輩・坂上さん(田中美佐子/65)に若年性認知症の可能性が浮上。彼女の一人娘・里美(美村里江/40)も登場し、これまで描かれた“育児”だけでなく、“介護の壁”という問題もフォーカスしたドラマが描かれた。

「実質的にはトリプル主人公のような構成の作品で、女性人気が圧倒的なディーンさん、実力派でキャリアウーマンが抜群に似合う江口さん、そして実生活でもママ5年目の多部さんと、キャストがもれなくハマっていることも作品人気に影響しているでしょうね」(前出のテレビ誌編集者)

 特に多部は、ヒロイン役で出演した『マイファミリー』(TBS系/22年4月期)が平均世帯視聴率12.9%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)を記録したり、主演ドラマ『これは経費で落ちません!』(NHK/19年7月期)が『東京ドラマアウォード2020』の連続ドラマ部門作品賞の優秀賞やギャラクシー賞テレビ部門の奨励賞を獲得するなど、出演作品は素晴らしい結果となっている。

「多部さんが出演を引き受けたドラマに“ハズレ”がないことから、ドラマ業界では“勝利の女神”のような存在になっていますよね。『対岸の家事』も数字だけでなく、《自分と重なることが多くて考えさせられる》《ただのママドラマじゃない。社会問題としてめっちゃ深い話だし、共感しかない》など、シナリオの評価がかなり高いですね」(前同)

 春ドラマTOP3のラインナップについて、長年ドラマをウオッチしているドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。

「春ドラマは、復讐、不倫、モラハラなど、暗めなテーマを扱った作品が多い中、上位3作品はいずれもこれらとは一線を画すタイプなのが特徴的ですね。

 小泉さんの『続・続・最後から二番目の恋』は、大きな事件が起こるわけではなく、笑ったり泣いたりしているうちに、登場人物に共感を覚えていく。また、多部さんの『対岸の家事』は育児や仕事などを通し、リアルな“生きづらさ”を描き、視聴者の共感を呼んでいます。日常とかけ離れた、刺激の強いドラマとは対照的ですね。

 一方、阿部さんの『キャスター』は既視感のある社会問題に切り込みつつも、ツッコミを入れたくなる展開もあり、あまり重い感じがしないので、肩の力を抜いて楽しめるエンタメとして、視聴者を引きつけているのでしょう」

 コア視聴率では『キャスター』、TVerのお気に入り登録者数では『続・続・最後から二番目の恋』が1位の2025年の春ドラマ。どちらでも2位のポジションにいる『対岸の家事』も合わせて、この3作品が多くの視聴者から愛されているようだ。

ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。