■退職代行サービス利用者の本音
実際、転職サービス『doda』などを提供するパーソルキャリア株式会社が運営する調査機関『job総研』が20代から50代の社会人585人を対象に行った調査によれば、「退職への心理的ハードルが下がっている」と答えた人がなんと9割超え。その理由としては、「退職が特別なことではなくなった」「無理して勤め続ける必要はない」など、価値観の変化が反映されています。
退職代行サービスの利用者の多くは「怖くて自分では言えない」「職場の空気的に退職を切り出しづらい」といった心理的な壁に直面しており、とりわけ依頼が最も集中するのは朝の時間帯。前夜は「明日も頑張ろう」と思っていたはずが、朝起きて急に出勤への意欲が消え、「もう無理」と判断するケースが多いといいます。
近年の若年層は、「無理して働くことが美徳」という昭和・平成的な価値観から距離を置き、「自分のペースで、自分らしく働くこと」を重視する傾向にあります。
ある新卒社員に話を聞くと、「昔みたいに“とりあえず3年頑張れ”というのは、いまやナンセンス」という言葉が返ってきましたが、今の時代をよく映し出していると感じます。こうした意識の変化が背景にあるからこそ、退職代行の利用は今後、当たり前のサービスとしてさらに広がっていくのではないでしょうか。
プロフィール
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。