■現実なら局が潰れるような不祥事

 毎回、ツッコミどころが豊富にあると言われる『キャスター』ではこれまでも、“内閣官房長官が会見室を使わずにぶら下がり会見をする”“まだ若い永野演じる華が『総合演出』という重職にあり、にもかかわらず演出は一切していない”など、さまざまな指摘があった。

 そんなドラマの第5話で、前出・民放キー局の報道マンが感じたツッコミどころとはなんだったのか――。まずは、梶原の契約更新を巡る描写だという。

「ドラマでは、海馬報道局長(岡部たかし/52)が“ちょうど契約の期限が来ただけ”と言い訳していたり、梶原が“月末の更新はしない。自宅待機してろってさ!”と荒れていたりと、まるで契約終了ギリギリのタイミングで契約更新をしているような発言がありましたが、これは不自然ですね。普通、こういった更新は少なくとも2、3か月前に行なわれていなければおかしい。

 たとえば4月末で契約を打ち切るなら、諸々の引き継ぎなどもありますから、遅くても1月には話がまとまっていなければならないですよね。しかも、梶原は番組のチーフディレクターなわけで、そんな重要なスタッフに対して、そんな適当な契約はしないですね」(前出の報道局に勤める民放キー局関係者、以下同)

 そして何よりもあり得ないのは「民放局の社会部長が逮捕された後もJBNが何事もなく稼働している」という部分だという。

「警察や検察、官公庁などを担当し、社会で起きる事件、事故、社会問題などを取材して報道していくのが報道機関の社会部なわけですが、社会部長、つまり報道のど真ん中を扱う部署のトップの人間が、『キャスター』でのような“黒い癒着関係”で逮捕までされるような不祥事を起こしたら、謝罪放送なんかで許されるはずがないですね。

 そのような人間を報道の社会部トップに置いている放送局は著しく信用を失いますし、総務省から“停波”されても文句は言えない、1000%あってはならない大事件です。ドラマの最終盤で“停波か真実か”みたいな話が展開されるならまだしも、通常回でサラッと流されるというのは……もちろんフィクションと言われたらそれまでですが、それにしたってトンデモが過ぎます」

 これまでも、細かいところを言い出すと枚挙に暇がないほどのツッコミどころがあったというが、

「『キャスター』はとにかくエンタメ性を重視していますよね。あえてリアリティを薄くして、面白く見てもらうのを最優先するという考えかもしれませんが、今、SNSでは他のドラマでもリアリティについてよく議論がされるなかにあって、『キャスター』は見ていて“さすがに……”と思えてきてしまうんです。

 そして、主人公の進藤が想像を超えるような大活躍をするのは良いのですが、“専門家がどうにもできなかった課題を進藤の何気ない提案でスピード解決”など、あまりにもご都合主義というか……。あと、言い方はキツいですが、進藤以外のほとんどの登場人物が“バカなの?”と思ってしまう場面が多くて……進藤が活躍できるように“引き立て役”にしているのでしょうが、そこもリアル感がない要因なのでしょうね」

『キャスター』について、長年の日曜劇場ウォッチャーであるドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。

「進藤は型破りなキャスターという設定だし、毎回ラストで話の辻褄を合わせてくるから、荒唐無稽なのは仕方ないと思っていましたが……不自然であり得ない展開が続きすぎて、”トンデモドラマ”と認定をしたくなってきました。本作には6人もの脚本家がクレジットされていますが、それがうまくまとまっていないのでは、と感じられてしまいますね。

 同じ日曜劇場枠で2023年1月期に放送された妻夫木聡さん(44)主演の『Get Ready!』にも脚本家が6人いて、序盤でつまずいて”チープすぎる””リアリティがない”などと酷評されていたんですが……同じ展開になってしまっているのかもしれませんね」

 ただそれでも、見終わった時には“日曜劇場を見た”とも感じられる『キャスター』。ダイナミックな展開、日曜劇場らしい音楽、そして阿部寛の顔の説得力で、同作は最後まで駆け抜けるのかもしれない――。

ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。