■嵐ファンがtimeleszにハマる「背景」
品田氏はまず、前提となる“推し活”のあり方について言及する。
「一般論として、『推し活』という言葉が定着した今の世の中、好きなグループがある、応援したくなる人たちがいることがある意味目的化している部分があります。心のどこかで推しの対象を探している人は多いんですね」(品田氏)
そのうえで、長らく活動休止中で、さらには活動終了することがついに決定づけられた嵐のファンが、嵐とまるで入れ替わるかのように新しく歩みを始めたtimeleszに注目するのは自然な流れだという。品田氏が続ける。
「嵐を一生懸命推していた人たちが、(タイミング的に)嵐に代わる心の拠り所を求めるという気持ちはあるでしょう。その際、全く違う系統のグループよりは、やはり似た空気をまとった人たちに心が動かされやすい可能性は大きいと思います」(前同)
嵐への“ロス”とtimeleszが活躍をし始めたタイミングが重なったのだ──。
続々と新規ファンが増えていく今の流れに乗ることで、新しい推しに移行する“参入障壁”も低くなっている。そこが他のグループではなく、timeleszが選ばれた理由の一つなのだろう。
また、timeleszのグループ像や楽曲が嵐と同じ「アイドルの王道」だと喜ぶ声も多い。「王道」の持つ魅力は何か。
「STARTO社でいえば、長年、ジャニー喜多川氏が手がけてきた雰囲気が感じられるということでしょうね。そうしてアイドルの方向性もさまざまになるなかで、(timeleszが)もう一度メインストリームの軸を示してくれるのは、ファンにとっては実家に帰ってきたような安心感もあるのでしょう」(前出の品田氏)
まさしく新曲『ワンアンドオンリー』は、アルバムコンセプトである“家族”を象徴する楽曲という位置づけ。また、自らの手で新体制をつくったtimeleszの8人には、
《8人には優しい世界でわちゃわちゃ楽しく過ごしてほしい》
《確実にメンバーの雰囲気がいいし、一人一人の持ってる個性が各方面で光ってて、国民的お茶の間アイドルになれる気しかしない》
と、それぞれの個性がありつつも全体としての一体感に惹かれる人も多い。
timeleszの持つ空気感について女性誌編集者は、「嵐に似たわちゃわちゃ感」だと指摘する。
「timeleszは、4月20日スタートの初冠バラエティ番組『タイムレスマン』(フジテレビ系、毎週日曜25時25分~)で“ゆるバラ”路線をとっていて、全員でわちゃわちゃする様子には《30分深夜番組いいよね 嵐の宿題くん思い出す》と、かつての『嵐の宿題くん』的ポジションだと話題です。
グループが賑やかにじゃれ合う姿といえば、嵐。それまでの男性グループには、あまりプライベートで交流しないスタンスのグループもありましたが、嵐は全員が全員のことを大好きなことが伝わってくるグループでした。その空気感がtimeleszにも引き継がれ、メンバーの仲の良さについつい自分も笑顔になり、元気がもらえる人は多いようです」(前同)
前出の品田氏は、その求心力について、「疑似家族」という言葉を用いる。
「推し活の楽しさには、共有や伝えるといった行動も含まれます。人数の多いグループで個性豊かなメンバーが揃っていると、それだけでさまざまな着眼点が生まれ、話題も広がります。また今は社会全体で人間関係が希薄になっているなかで、つながることができ、そこで信頼関係を築けるのは大きな魅力。メンバーやファン同士と疑似家族のような空気感を味わえるのが、人気が出るグループの特徴でもあります」
timeleszファンからは、《解散とか活動休止するグループが多い中で、家族を増やして活動してくれているだけでうれしいね》という声もある。
タイムレス――時代を超えて、「絆」の価値をあらためて感じさせてくれるtimeleszが、王道でありながら新時代を切り開く、唯一無二のグループとなっていくことは間違いなさそうだ。
品田英雄(シナダ・ヒデオ)
1957年生まれ、東京都出身。学習院大学法学部卒業。
1997年、月刊誌『日経エンタテインメント!』創刊、編集長に就任。2007年、10周年を機に編集委員に就任。現在は日経BP総合研究所 客員研究員を務める。専門はコンテンツ・ビジネス/流行・消費動向/ヒット作り。テレビ、ラジオなどメディア出演多数。著書『ヒットを読む』(日本経済新聞社)『日本ゲーム産業史』(日経BP)ほか。日経MJ(流通新聞)「品田英雄のヒットの現象学」連載中。