■『続・続・最後から二番目の恋』との共通点

 乳児の頃の夜泣き問題も描かれたが、その心情も見ていてツラくなるほどリアルだった。加えて、独身キャリアウーマンである娘、離れて暮らす親が認知症という状況は、30~40代に深く刺さるのは当然。しかし、どちらの問題にも寄り添う人がいて、きちんと救われるまでを描けているのは、さすが、配信で大きな支持を受けているだけのことはある。

 本作のジャンルは、いわゆるホームドラマに入れていいと思うが、“家族”というもののあり方について、ここまでリアルに描いたドラマは、近年はあまり見当たらない。強いて言えば、昨年7月期の『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)ぐらい。同期の『海のはじまり』(フジテレビ系)も“家族”を描いたが、こちらは個人それぞれの生き方にスポットを当てていたから、ちょっと違うだろう。

 現在の“家族”、また“夫婦”について、ドラマで解像度を高く描くのは、けっこう画期的なこと。だからこそ、『対岸の家事』が高く支持されているのではないだろうか。また、50~60代の人生をリアルに描いている、『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)も、これまで見落とされがちだったテーマに光を当てる、今までにないドラマで、画期的という点では『対岸の家事』と同じだ。

 胸キュン、不倫、復讐ものが、最近のドラマの定番になりつつあるが、その一方で視聴者は、なんだかんだと新しい表現のドラマも求めている。今期ドラマの中で、『対岸の家事』と『続・続・最後から二番目の恋』だけが、TVerのお気に入り登録数が100万超えを記録しているのも、そういう理由なのだろう。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。