■フジテレビ問題の影響をモロ被り
今回、反響が大きかったのは、突如登場した幼なじみへの嫉妬エピソード。ひと波乱が予想されたが、結果的にはなつ美(芳根)と瀧昌(本田)が互いに瀬田に嫉妬し合うという、ピュアな“すれ違い”で決着。これが、瀧昌の子どもの頃の悲しい思い出の告白と、星空を見上げる2人のキュンシーンへの伏線として機能し、ほほえましい空気感に包まれた。
また、注目キャラの芙美子(山本)は、現代であれば“キャリア女性”の象徴として、“専業主婦”のなつ美に批判的なポジションとして描かれただろう。しかし、本作では、あくまで“立場の違う友人”という位置づけに留まり、むしろ、なつ美と瀧昌を後押ししている。こうやって、終始、2人のために物語が作られているのが、視聴者に支持される理由だと思われる。
さらに、瀧昌役の本田響矢が、ドラマ中盤にきて“こなれ感”を増してきたのも、見逃せないポイントだ。なつ美と初夜を迎えるどころかキスシーンさえないのに、手をつなぐだけで見る者の心を撃ち抜くのは、ヒロインの相手役として素晴らしい演技を披露しているということ。今後も、芳根との“ムズキュン”シーンに期待できそうだ。
唯一、残念なのが合成映像だ。コント番組レベルで、今回の夜空を見上げるシーンにも、《星空バックの2人はさすがにCGがチープすぎ》などのツッコミの声が。フジテレビは中居正広氏(52)の女性トラブルに端を発した、スポンサー離れで予算がないのだろう。着物や軍服などの衣装はしっかりしているのに、CGが安っぽいのが、今後の唯一の懸念材料になりそうだ。
しかし、そんな星空CGにも、《我々がキュンキュンしすぎて倒れてしまわないように、正気を保たせるために配慮されているのであろう》などと、イジることはあっても、本気で怒る視聴者はいなかった。むしろ、なつ美と瀧昌が幸せなら、それで十分というレベルまでハマっている人は多く、今後の視聴率、配信の数字の伸びに注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。