■北村匠海のどん底演技が冴えわたる

 一方、東京の嵩(北村)は、弟・千尋(中沢元紀/25)からの手紙で、豪の戦死とのぶの縁談のことを知るが、のぶを想う千尋の気持ちも知らず、卒業製作を仕上げたら、のぶに会いに行って気持ちを伝えると、呑気な様子。豪の戦死で重い空気になっている高知の朝田家とは、ずいぶんと落差を感じた。

 史実では、暢さんは太平洋戦争前に日本郵船勤務の男性と出会い、最初の結婚をしている。23日の第40話で、のぶが次郎の求婚を受け入れていることから、同じ流れになるはず。第9週のトピックはこれになりそうだ。そして、のぶの結婚と並んで大きなトピックになりそうなのが、失恋してしまった嵩だろう。呑気なことを言っていただけに、その落ち込みもひどそうだ。

 北村はドラマ、映画、舞台などで、さまざまな役柄を演じているが、やはり、思い悩む実直な青年を演じさせれば抜群の俳優だ。第8週は豪を失った河合優実の悲しみと怒りの演技が圧巻で、主演の今田の存在感が霞んでしまったが、第9週も同じように、北村のダーク演技が今田を食ってしまいそうだが、はたして……。

 のぶは教師を目指すようになったあたりから、ヒロインながら受けに回ることが多くなっている。それは、のぶが“嵩を支える”というキャラ設定のため、仕方のないことかもしれない。今後、のぶが前面に出るのは、最初の夫を失い、“軍国婦人”の信条を変えるときだろうか。そこからの今田の爆発に期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。