■「外免切り替え制度」人気の理由は格安価格

  24年に制度を利用したのは7万5905人。国別では、ベトナム人や中国人の取得者が目立つ。わざわざ日本で外免切り替えを行う理由は、なんなのか。

「手続きが簡単で、コストが4600円と安いからでしょう。交通ルールを問う知識確認は、10問中7問に正解すれば合格する。技能確認も免許センター内の約1.2キロのコースで、一時停止やS字カーブの運転を行うだけです」(同)

 中国人向けの日本ツアーには、外免切り替え制度を組み込み、国際免許証の取得を目的にしたものもあるという。

「現行制度では、観光ビザで日本を訪れる旅行者でも滞在先のホテルから『一時滞在証明書』を発行してもらえる。これと自国の免許証を提出すれば、簡単に切り替えの申請ができるのです」(前出の社会部記者)

 はたして単なる旅行者が、日本の標識や交通ルールを十分、理解しているのか。

「難しいでしょう。標識は多言語対応ではありません。道路も日本のように左側通行の国ばかりではないですから」(前出の諸星氏)

 相次ぐ事故を受け、5月22日、警察庁の楠芳伸長官は遅ればせながら、制度の根本的な見直しを明言した。

 だが、諸星氏はこう言って釘を刺す。

「路上での実技試験がないのも、おかしい。日本で運転する以上は、国内で免許を取った人と同じレベルの知識と技能を求めるのが、当然でしょう」

 さらなる見直しを求める声が、高まりそうだ。

プロフィール
諸星陽一
自動車雑誌の編集者を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストに。20代後半からは富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。現在は自動車雑誌やインターネット媒体を中心に執筆活動を行っている。フォトジャーナリストとしても活動中。国内自動車メーカーによる安全運転講習会・試乗会のインストラクターも務める。