■危うすぎる福原遥の誰袖

 また、《史実ではドラマ内の登場人物みんなほぼほぼ不幸になる的な『じわじわ鎌倉殿』なのだけど、ドラマとして創作含めて盛り上げ輝きながらも「今後を知ってる人にはわかる」フラグをどんどん立ててってるのが末恐ろしい。田沼も誰袖も春町も…》と、それぞれの今後の運命を心配する声もあった。

 瀬川(小芝風花/28)とは、全く違う妖しさを見せた誰袖。指摘にあるとおり、田沼意次(渡辺謙/65)の失脚から、誰袖と意知にも悲劇が待っているため、誰袖の“そそのかし”がよりスリリングに見えてくる。これを蔦重が開いた大宴会での屁ネタにぶつけ、凄みを倍増させたのは、脚本、演出の勝利だ。

 意次の腹心の勘定組頭・土山宗次郎(栁俊太郎/33)という太客がいながら、意知に近づく誰袖の狙いが、今はまだ見えてこない。小さい頃から吉原でいろいろな修羅場を見てきて、狂歌を詠めるほど教養もあるのに、ここまで危ない橋を渡ろうとするのはなぜか――?

 本作は、吉原に閉じ込められた、花魁の不幸、理不尽さをたびたび描いてきた。小さい頃から吉原にいた誰袖も、それに連なっている。単に身請けされたい、外の世界で豪華な暮らしをしたいという単純な思いではなく、世に対する恨みを持つ破滅型なのではないだろうか。先のことは考えず、男たちや幕府を手玉に取りたいとしか考えていないのかもしれない。誰袖の暴走はさらにエスカレートしていくだろう。

 今後、第10代将軍・徳川家治(眞島秀和/48)が亡くなり、反田沼派の松平定信(寺田心/16)が台頭して意次は失脚。誰袖を身請けした土山も、多額の横領が発覚して逃亡するという流れで、誰袖の悲劇が怒涛の展開で描かれるはず。そのとき誰袖を演じる福原が、どんな表情を見せるのか、今から楽しみだ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。