超大物2人の対談が、またも実現した。
人気ロックバンド、ユニコーンの川西幸一氏(63)と、2022年に『塞王の楯』(集英社)で第166回直木賞を受賞した作家の今村翔吾氏(38)。
レジェンド級のミュージシャンと人気作家のトークバトルは、時代小説ファンとして知られる川西氏の熱烈なラブコールで、2022年に初めて実現。今年が2回目となる。
WBC日本代表から意外すぎる創作の秘密まで展開した、貴重な対談を独占リポート。

■『まつり旅』の創作活動の原点とは?

 すべての都道府県を回った「まつり旅」で創作活動への刺激があったか聞かれた今村氏は「今はネットでなんでも見ることができるし、行ったような気分になれるけど、やはりその場所に実際に行って風の音とか匂いを感じることで、より鮮明な描写ができると思いました。それから、こういうことでもないと絶対行かないような地方の山道で、夕日が沈みかけていて、おばあさんがひとりで道具を片付けている、そんな風景に出会ったときに、いろいろ考えました。このおばあさんはこの場所を離れたことがないかもしれない、そういう人は世界をどう見ているのか……そんなことを考えたりしました。僕にとってのキーポイントになりましたね」と語った。

 ただ、そういった印象的な場面をメモに取り残すことはないと言う。「メモを取らないと忘れるような景色は忘れていい。必要なものは心の中に残っていて、あとでちゃんと小説の中に登場するんです。いったん忘れるという作業が大事だと思いますね。まあ、メモをするのが面倒なだけという説もあるけど(笑)」と創作秘話を明かし、もちろんオチも忘れない。

 対する川西氏は「まったく同感ですね」と頷く。「僕たちも旅の多い仕事。さっきのシーンだとしたら、おばあさんがどうやって生きてきたのかを想像したり、移動中の車内から家々の明かりが見えたら、あの明かりの中ではどういう暮らしをしているのかとか、そういうことをよく考えます。そうやって覚えていたものを歌詞を書くときに使いますね。僕もメモは取りません」と川西氏。

川西幸一

「まつり旅」では車で移動しながら原稿執筆を続けたという今村氏。「秘書が運転して、僕は後部座席にこしらえた机で連載原稿を書いてという。酔わなかったか? 大丈夫だったんですけど、二か所だけ……山口県の心霊スポットになっている、とある道と、阿蘇山が大変でした。山道のカーブと硫黄の匂いがエグくて、こんなところで原稿を書いているのはオレだけだろうなと思っていました(笑)」。