日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。ここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。
意外と知られていませんが、JRAでは全国の競馬場の開催前に、場長や職員、各場の馬主人協会役員などが出席し、人馬の安全を祈願した、“馬場浄め式”が行われています。
6月11日、僕は騎手会長として、14日に開幕する函館競馬の浄め式に参列しました。
宮司の祝詞の後、事故などが起きないよう祈りながら玉串を捧げ、その後、場内の『馬頭観世音』の石碑の前で、『馬頭観世音祭』が執り行われました。
全馬、全騎手の無事を祈り、7月20日までの開催12日間、全力騎乗で挑みますので、皆さん、最高の競馬を楽しんでください。
函館競馬初日。最初の勝ち星は、3歳以上1勝クラスに出走した同期のエビちゃん蛯名正義厩舎のラパンチュール。逆に惜しかったのは、GⅢ・函館スプリントSに挑んだ4歳牝馬のジューンブレアです。
1枠1番という極端な枠が少し気になっていましたが、前半は4番手で流れに乗り、直線は外に持ち出してGOサイン。
ほぼ完璧なレースでしたが、内から1頭、するすると抜けてきたカピリナと壮絶な叩き合い。写真判定までもつれましたが、最後は首の上げ下げの差で、勲章を取り逃してしまいました。
そして翌15日、阪神のメインは、メイショウタバルとともに挑む前半最後のGⅠ・宝塚記念です。
父・邦彦の時代からずっとお世話になっている松本好雄オーナーの愛馬で、兄貴と慕う石橋守調教師の管理馬。勝ちたい、とにかく勝ちたい。ゲートに入る前から、勝ちたい気持ちがあふれていました。
6枠12番からスムーズに先頭へ。前半5Fで刻んだタイムは59秒1。これ以上速くはしたくなかったし、スローにしたくもなかったので、理想的な展開に持ち込むことができました。
3コーナーを気持ちよく回って、スピードアップ。勝負は最後まで、どうなるか分からないと思いながら乗っていましたが、直線、ギアチェンジをすると、さらに加速。最後の力を振り絞るように走り切り、先頭のままゴール板を駆け抜けてくれました。