阪神タイガースのレジェンド、“ナニワの春団治”こと川藤幸三が猛虎愛を語り尽くす熱血コラム。OB目線の激励から時には喝も……熱き魂が炸裂する!

 こう見えてもワシは礼儀正しい。だから初めて会った人は戸惑うようや。横柄でガサツな人間といった先入観があるんやろう。この顔やから、しゃあない(笑)。

 実はワシに礼儀の大切さを教えてくれたんは長嶋さんや。長嶋さんに初めて挨拶したのは、プロに入って2年目か、3年目やった。

 甲子園球場の通路で、深々と頭を下げ、「おはようございます!」と大声で挨拶した。長嶋さんも「ヨオッ!」と答えてくれた。

 ところが、顔を上げると、長嶋さんの視線の先はワシやない。振り返ると、そこにいたのは王さんやった。なんのことはない。長嶋さんはワシのことなど眼中になく、王さんに挨拶しただけで、ワシの大いなる勘違いやったわ(笑)。

 でも、ワシが、ちょこちょこ試合に出るようになってからは、しっかり顔も名前も覚えてくれたし、何かと気にかけてくれた。ワシが挨拶するより前に、

「よっ、カワ、元気か」
「どう、最近、調子よさそうじゃない?」

 と、必ず言葉をかけてくれた。あんなスーパースターが、ワシのような補欠を気にしてくれると思うと、嬉しくてたまらんかった。

 だから、ワシも長嶋さんみたいに、若い選手には必ず言葉をかけるようにしてきたわけや。