日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が、本サイトで現代のトレンドを徹底解説。いま戸田氏が注目するのは、人気を集める“ソロ活ツアー”だ。
「ひとりで何かを楽しむなんて寂しい」という価値観は、いまや過去のものになりつつあります。近年、“ソロ活”という言葉の広がりとともに、ひとりで過ごす時間はネガティブではなく、自分を豊かにする前向きな行動として受け入れられるようになってきました。カラオケや映画鑑賞に限らず、旅先でのアクティビティもひとりで気軽に楽しめるようになり、観光業界もこの変化に柔軟に対応しています。
特に注目されているのが、ひとり旅に特化したツアーの人気ぶりです。旅行会社のクラブツーリズムでは、昨年度の「おひとりさまツアー」の国内売上が過去30年で最高額を記録しました。この好調の背景には、「誰かと一緒でなければ旅行は楽しめない」という従来の発想が変わりつつあることが挙げられます。実際、静岡県への1泊2日のバスツアーでは、17人の参加者全員が単独。座席はひとりに2席ずつ用意され、周囲に気兼ねなく景色を眺めたり、食事を味わったりできる設計が好評です。
旅の途中で見知らぬ参加者に声をかけ、記念写真を撮ってもらうといった交流も自然に生まれます。「気を遣わず自由に動けるのがいい」「旅先での偶然の出会いが楽しい」といった声も多く、孤独とは異なる“ポジティブなひとり時間”が多くの共感を呼んでいます。自分ひとりのリズムで過ごせることは、団体旅行にはない魅力かもしれません。