老後の国民生活の基盤が今、大きく揺れている。
「6月13日、年金改革関連法が国会で成立しました。法案の柱となるのは基礎年金の底上げ。財源となるのは、サラリーマンが月々の給料から天引きされる厚生年金の積立金です」(全国紙社会部記者)
その背景にあるのは基礎年金のみを受け取る自営業者や、加入期間が短い厚生年金加入者の給付額の問題。
「2023年度末時点で基礎年金を含んだ厚生年金の受給平均月額が14万7000円なのに対して、基礎年金のみだと5万8000円。今回の改革はこれ以上、基礎年金の給付水準が下がらないようにしようという苦肉の策なのです」(前同)
では、サラリーマンが加入する厚生年金受給者への年金給付額は減るのか。
「厚生年金を基礎年金へと回すだけなので、多くの人の年金は減りません。
一方、厚生年金の受給額が多いとされる現在63歳以上の男性や67歳以上の女性では、年で最大23万円減額される計算です」(同)
ファイナンシャルプランナーである伊藤亮太氏は、今回の改正法案の狙いをこう語る。
「バブル崩壊以後、非正規社員の増加で収入や生活水準の格差が広がっています。この世代間格差を、年金という視点から是正する意図があるのではないでしょうか。
とはいえ、命の終わりは誰にもわからない。60歳からの繰り上げ受給で生活に潤いを出し、足りない分はアルバイトで補うのも1つの選択肢です」
仮に60歳から繰り上げ受給を選択した場合、基礎年金の受給額はいくらになるのか。
「繰上げ受給を選択した際の減額率は0.4%×月数です。60歳から受給するなら24%減となります。基礎年金のみを受給する場合、満額は月額6万6000円なので、受給額はおよそ5万円です」(前同)
総務省統計局が発表する2024年度の『家計調査』によると、65歳の単身者による月当たりの支出は、16万5923円。2人以上の世帯で暮らす場合は30万243円だ。
基礎年金のみでは心もとなくとも、働くことで生活は安定し、ちょっとした潤いも生まれるとして、精を出す高齢者は意外と多い。