■「箏」をハンガーラックに使った“コンセプト”

 まず、箏がハンガーラックに使われた経緯には、「アップサイクル」を訴えるという企画意図があったという。タワーレコード広報部担当者が説明する。

「ユーズドTシャツを販売するコーナーに設置することで、アップサイクルのコンセプトを伝えることを目的としていました。

 製作にあたっては、担当者と什器の制作を依頼した専門デザイナーの間で、破損や経年劣化により、演奏用途として使用が困難となった楽器を再利用することを考案しました。実際に使用した箏は、デザイナーがリサイクルショップで入手したものです」(広報担当者=以下同)

 設置していた期間は、2024年4月5日から2025年7月2日までとのこと。客からの指摘により「箏を什器として使用することが不適切であると判断」すると、2日の閉店後に撤去したという流れだ。迅速な対応の裏で、「抗議」の声をどう捉えているのか。

「箏は日本の伝統的な楽器であり、その美しさや音色に敬意を払う方が多くいらっしゃいます。今回、弊社が箏をハンガーラックの什器として使用したことで、その尊厳を損ねる行為であると受け取られた方がいらっしゃったと認識しています。

 伝統文化に対する配慮に欠けていた点が、皆様からのご意見に繋がったと考えております。多くのお客様に不快な思いをさせてしまったことを真摯に受け止め、今後は物の再利用や装飾品の選定において、その物の背景にある文化や歴史、社会的な価値への配慮を徹底するよう、会社全体で教育を行っていきます」

 同社がフロアづくりで意識していることについて聞いた。

「タワーレコードでは、お客様に音楽との新たな出会いを提供し、店舗での体験を豊かにすることを重視しております。そのために、ディスプレイを含めたフロアづくりにおいては、お客様が楽しく、快適に過ごせるよう、季節感やトレンドを取り入れたり、アーティストの世界観を表現したりするなど、視覚的にも魅力的な空間づくりを目指しています。今回頂戴いたしましたご意見は、企業として重く受け止め、今後の店舗づくりに反映させてまいります」

 アップサイクル企画は、企業にとっても大きな課題となっていきそうだ。